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2009年8 月 4日 (火)

日本書記の在位と年齢の倍暦に関する一考察

日本書記の年代復元を行なうためには、倍暦に関する解明がなくして解明することはできない。試行錯誤はあったもののある程度の精度で「在位」を読みとることができた。

Wikipedia の「日本書紀」の注釈に次のようなことが記載されているのに気づいた。
『三國志』魏書 東夷伝 倭人にある裴松之注に引用される『魏略』逸文に「其俗不知正歳四節但計春耕秋収爲年紀」(その俗、正歳四節を知らず。ただ春耕秋収を計って年紀と為す)との倭の風俗記事があることから、1年を2倍にして年次を設定したとする2倍暦説がある。しかし2倍暦で『書紀』紀年の該当期間が矛盾なく説明できる訳ではないことから、学界では支持するものは少ない。(筆者も同じ見解である。)

筆者の年代解読は、神武即位年から開化崩御年までを「n×二倍暦」と見做し、解読を行ってきた。「n×二倍暦」も基本は「二倍暦」である。上記の「2倍暦」が文字通りの意味なら、「n×二倍暦」とは異なる。
「n×二倍暦」が用いられている神武即位年から開化崩御年までを該当期間とし、在位と年齢の倍暦について考察する。

「n×二倍暦」とは
各天皇の在位や年齢は、単純2倍暦を基礎とし、その上に延長分が加算されている。延長分は天皇ごとに異なるため、「n×二倍暦」として示している。すなわち「n」は各天皇固有の数値を持つ。ただし天皇全体では、「n=2」となり、「4倍」あるいは「4倍暦」と見做せる。

1.在位と年齢の解読と倍暦
各天皇の在位と年齢を復元する。その復元を通じて、「n×二倍暦」がどのように用いられているかを明らかにする。説明のため、事例として孝昭天皇の数字を用いる。
1)在位や年齢の解読には、日本書記に記載された宝算c、即位年齢d、立太子年齢eおよび最終年次年数(=崩御年齢)f、が必要になる。
注1)筆者の従来の記事では「崩御年齢」と表示してきたが、実の崩御年齢もあり、紛らわしいので「宝算」と呼ぶ。
  注2)最終年次年数は、崩御年齢である。(ただし2倍暦の数字である。)
それぞれの年齢は、直接記載されていない場合があるが、立太子年と立太子年齢から求める。孝昭天皇の数字を次に示す。
宝算c=114歳、即位年齢d=32歳、立太子年齢e=18歳、最終年次年数(=崩御年齢)f=83年(歳と読み替える)

2)宝算c、即位年齢d、立太子年齢eおよび最終年次年数(=崩御年齢)fの関係は次のようになっている。
宝算は、次に示す通り、即位の前年の年齢に最終年次数を加算した値である。
宝算c=(即位年齢d-1)+最終年次年数f
先ず、1)で求めた数字が正しいか、事例について確認する。
[宝算c114=即位年齢d32-1+最終年次年数83=114(数字の整合性が取れている)]

解読に用いる数字が正しく整合性を持った数字であるか確認することは重要である。事例の孝昭天皇の場合は正しい数字と確認されたが、同様のことを各天皇の数字に対し行うと、安寧天皇の宝算は記載では57歳となっているが、67歳の誤りである。ただし、以下に述べるとおり、宝算自体意味の薄い数字であり、実の年齢や在位には影響しない。

3)上記の宝算c、即位年齢d、最終年次年数f、の数字は2倍暦の数字である。あらかじめ実の数字である1/2の数字を求める。
実宝算c/2=114/2=57(歳)
実即位年齢d/2=32/2=16(歳)
実最終年次年数f/2=83/2=41.5(≒42)→f/2を実崩御年齢に読み替える42(歳)

4)実在位を求める。
実在位=実崩御年齢f/2-実即位年齢d/2+1
事例に当てはめると、次のようになる。
[実在位=実崩御年齢42-実即位年齢16+1=27(年)]

5)事例の場合の実数を基に、記載値の倍数を求める。
宝算の倍数=c/(f/2)=114/42=2.71倍
崩御年齢の倍数=f/(f/2)=83/42=(84)/42=2(2倍暦である)
注3)83年に空位1年を加算し、84年と見做す。
在位の倍数=83/27=3.07倍(n=1.54)

6)実立太子年齢e/2=18/2=9(歳)
注4)実立太子年齢は、実即位年齢と比較し、2倍暦か実年かを見極める。

7)孝昭天皇の事例に基づき考察する。
宝算について
日本書記は年次における元年を即位年と位置付けた記載をしているため、元年における年齢(即位時の年齢)を示さざるを得ない。
日本書記は、即位時の年齢に、実年齢の2倍暦の数字を用いることを基本としている。これを可能にするため、前天皇の年次表上に立太子の時期と年齢を設定している。宝算は、即位時の年令を基に最終年次まで延ばされた年齢である。

従って、孝昭天皇の宝算114歳は、即位年の年齢32歳に最終年次年数83歳を加え、1年減じた数字である。上記の説明では即位前年の年齢31歳に最終年次年数83歳を加えているが同じことである。
宝算を2倍暦とすると、57歳になるが、年次表の作成上から生まれた数字であり、それ以上の意味はない。ただし、100歳を超える年齢を想定して決めたシステムと考えることができる。宝算の倍暦2.71倍も特に意味をもたない。

年齢と在位について
年次表が2倍暦を基本にできている。
従って、即位年齢は、実年齢を2倍にした年齢としている。
同様に、最終年次年数は、実崩御年齢を2倍にした年齢に相当する。年次は年齢と考えればよい。
孝昭天皇の実即位年齢は、記載即位年齢36歳の1/2の16歳であり、実崩御年齢は、最終年次年数83歳の1/2の42歳である。
在位は、上記の実即位年齢と実崩御年齢から計算すればよい。

2.年次表における2倍暦
上記1.において、日本書紀に記載された数字から実年齢と実在位を解読した。年次表は2倍暦で作られていると述べたが、実感が湧かないであろう。
「表12-1 神武~崇神復元年代の詳細」を添付するので見ていただきたい。

表12-1 神武~崇神復元年代の詳細

孝昭天皇を例に説明する。
左側には、記載年代を書いている。年代の始まりをBC635年=神武26年次から始まるようにしているのは、この年代を即位年にすると解読しやすいからであって、最終的には,BC635年=神武26年次は、復元年代の西暦162年に移動する。左から5列目に移動先の西暦が示されている。
重要なことは、記載年代は1年ごとに書かれているが、復元年代に相当する西暦の年代は1年が記載年代の2年分に相当するように書かれている。すなわち、記載年代は2倍暦で書かれていることを示している。
孝昭天皇の年齢欄には、(二倍暦の年令)/(実年齢)の両方が書かれている。
復元年代と年齢欄を照らすと次の結果が得られる。
孝昭即位196年、32歳(実16歳)
孝昭崩御222年、83歳(実42歳)、在位27年
上記1.で得られた即位年齢と崩御年齢のときの復元年代が得られる。
表12-1から、日本書記の記載年代が2倍暦でできていることが証明される。
なお、神武即位年が、西暦162年であることに関しては、日本書紀に記載された「ニニギ降臨の暗号」の解読から得られた年代である。

説明は略させていただく。「日本書紀の紀年論と復元年代の紀元」を読んでいただきたい。

3.「n×二倍暦」の説明の中で、次のように述べた。
「n×二倍暦」の「n」は各天皇固有の数値を持つ。ただし天皇全体では、「n=2」となり、「4倍」あるいは「4倍暦」と見做せる。
このことについて、説明をする。
神武天皇から開化天皇までの記載された期間を、合計在位(空位を含む)としてみると、BC660~BC98年は、563年になる。神武暦の年代と同じである。
4倍暦と見做すと、140.75年(140年)である。
さて、復元された在位は、9人の天皇の復元された実在位をすべて加算すると、139年になる。神武崩御後の西暦176年は空位年である。空位年を含む合計在位は140年となる。
即ち、神武から開化までの期間(在位)140年は、復元された合計在位と同じになり、記載在位563年は復元在位の4倍になっている。
注4)記載在位から計算された140.75年は、141年としてはならない。編者の数字の見方は、「小数点以下は切り捨て」を原則としている。この場合、記載された崇神即位年BC97年は神武暦564年であり、1/4は141年となる。

4.孝昭天皇以外の天皇の在位と年齢
日本書記が2倍暦で書かれていることを孝昭天皇の例に基づき述べた。他の天皇も基本的に同じである。
在位計算は、
実在位=実崩御年齢f/2-実即位年齢d/2+1
である。この計算式[在位=f/2-d/2+1]を標準計算式と呼ぶ。
この標準計算式は、神武天皇から開化天皇までの、2倍暦で記載された天皇にしか適用できない。
また、当たり前のことだが、実崩御年齢f/2と実即位年齢d/2は、記載された情報から得られている。
「表6-1 天皇の在位計算(神武~開化)」および「表7 天皇の実年齢」を見ていただきたい。

表6-1 天皇の在位計算(神武~開化)

表7 天皇の実年齢

大半の天皇は、標準計算式に基づき、実崩御年齢、実即位年齢や在位が得られる。
標準計算式で直接得られない場合も、次のように読み替える必要がある。
綏靖天皇の場合、即位年齢52歳が4倍になっているから、1/4の数字13歳を用いる。
孝元天皇の場合、実崩御年齢を宝算116歳に読み替えればよい。(最終年次57歳は在位の2倍暦の数字である)
神武天皇は、多少説明を加えなければならないため、「神武天皇在位14年の根拠(まとめ)」を読んでいただきたい。

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