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2009年6 月 9日 (火)

弥勒の出世は56億7千万年後か、57億6千万年後か

表題に示したとおり、弥勒菩薩の出世には2種類の数字がある。一体、どちらが正しいのであろうか。長阿含経に基づき検証する。
注1)阿含経は、初期仏教の経典であり、紀元前4世紀から紀元前1世紀にかけて徐々に作成されたものである。長阿含経が含まれる。

最初に、弥勒の居たとされる兜率天(とそつてん)について述べる。長阿含経では、叫喚地獄の兜率天は次のようになっている。
A:兜率天の1日はこの世の400年に当たる。
B:兜率天の4000年を1日1夜とする。
C:兜率天の寿命は4000年である。
d:兜率天の記載にあるこの世の1年は、365日が用いられている。(ただし、他化自在天の場合1年360日が用いられている。)
この世の年数=A×d×B×d×C=400×365×4000×365×4000=852,640, 000,000,000(852兆6400万年)

弥勒菩薩の出世については、上記の(B×d)がカットされる。恐らく、数字が巨大すぎるため、「兆」のレベルを「億」のレベルに変えたと思われる。
計算式は次のようになる。1年の日数を変えて計算する。
この世の年数(1年365日の場合)=A×d××C=400×365×4000=5億8400万年
この世の年数(1年360日の場合)=A×d××C=400×365×4000=5億7600万年
この世の年数(1年354.37日の場合)=A×d××C=400×365×4000≒5億6700万年
上記計算で、1年の日数として用いたものは次のとおりである。
1年365日は、太陽暦に基づく。
1年360日は、ミトラ教はアーリア人の中から始まったが、1年360日である。あるいは太陰暦の時代の暦に、中国に由来する二十四節気(にじゅうしせっき) がある。
1年354.37日は、太陰暦に基づく。

以上から考えると、
・長阿含経において、:兜率天は365日である。計算結果は数字が異なり、否定される。
・長阿含経において、1年は365日と360日が用いられているが、太陰暦の1年354.37日は用いられていない。1年354.37日が用いられたとする積極的な根拠が見当たらない。
・10世紀の段階で、既に、56億7千万年と57億6千万年の両方の数字が見られる。
従って、通説のとおり、1年は360日で計算された5億7600万年が元の年数で、後世(10世紀以前)において、1桁大きい年数が求められ、57億6000万年が生まれ、他方で発音しやすい、数字が覚えやすいなどの利点のある56億7000万年へ変化したと考えられる。
なお、ミトラ教に基づき1年360日が用いられたとすると、阿含経の兜率天は365日であり、説明がつかなくなる。1年360日を用いた国は多くあり、ミトラ教だけを根拠にしない方がよさそうである。

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